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アラン・チューリングの築いた世界

皆様、ご無沙汰しております。

先日、ロンドン出張の機内で、「イミテーション・ゲーム」という映画を鑑賞しました。
今回は、この映画の主人公、アラン・チューリングについて書かせていただきます。
ところで、皆さん、この人物をご存知ですか?
それでは、コンピュータ・サイエンスのノーベル賞「チューリング賞」を、ご存知ですか?

そうです、チューリング賞の名前は、このアラン・チューリングの名前にちなんでいます。
アランは英国の数学者で、現在のコンピュータの基礎原理を発明した天才です。
コンピュータの世界で最も有名な人物は、ビル・ゲイツ、ステイーブ・ジョブス等は有名ですが、アランの功績は、「機械にモノを考えさせる」という基本原理を発明した点で画期的でした。
アランが生まれていなければ、当然、パソコンも携帯電話も開発されるわけもなく、結果、我々は未だにコンピュータやスマートフォンの無い世界に住んでいたかも知れません。
現代生活のあらゆる機能、交通システムも電力システムも、コンピュータ無しでは成立しないので、そういう意味では、もし彼が生まれていなければ、未だに人類は、ロウソクや蒸気機関車に頼る毎日だったかも知れません。

彼は1912年、英国生まれ。
第二次世界大戦中は、ドイツの誇る軍事暗号システム「エニグマ」の解読に成功し、それまでドイツ潜水艦の攻撃に無抵抗であった英国の船舶を、その攻撃から守ることにより、2,000万人以上の命を救った、と言われています。
いまや普通に使われている、アルゴリズムやアプリケーションという言葉も、その全ての基本概念は、アランの研究がベースになっています。
それだけの功績にもかかわらず、彼は様々な迫害にあい、41歳のときに、毒りんごを食し自殺してしまいました。
何という不幸でしょう。

それだけの偉大な功績にも関わらず、どうして彼は、それほどの名声を得ることが出来なかったのでしょうか?
その理由は、二つあるようです。
一つは、彼がゲイだったこと、もう一つは、彼の暗号解読の仕事は、イギリス政府の方針で徹底的に隠されていたことによります。
(当時、英国ではゲイは犯罪とされ、取り締まりの対象でした)
(又、暗号解読チームの存在は、最近まで、英国の国家秘密とされ、その存在すら隠されていました)

2009年になり、やっと英国政府は彼の名誉回復を宣言し、天国の彼に謝罪しました。
生誕100年の2012年には、世界各地で、多くの記念イベントが行われました。

我々が現在享受している、楽しく便利な生活は、もちろん幾多の人々の地味な努力の積み重ねの結果ですが、ニュートンやアインシュタイン、そしてチューリングといった人々の存在は、人類の進化にジャンプをもたらしました。

過去の多くの先陣たちの功績を、たまには、振り返る時間があってもいいかも知れませんね。